JDDW2012でパネルディスカッション小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望に参加した。WallaceらがGastroenterology2011に発表された内容であるが、PPIを健常者に投与すると、腸内細菌叢が変化して小腸病変が増加する可能性が示された。潰瘍性病変が下部小腸に多く出る傾向があるようである。またカプセル内視鏡の普及により、様々な小腸の内視鏡所見が集積されるようになってきたが、NSAIDs投与群では約60%に何らかの小腸病変が、約30%には、びらん、潰瘍が出現するという。循環器科や整形外科領域ではNSAIDsが多用され、PPIの併用が保険適応として認められたが、やはり粘膜防御因子製剤の役割をもっと重要視すべきであると考えられた。
ランチョンセミナー分子標的薬を基本とした大腸癌化学療法で、愛知医科大学三嶋教授の講演を聞いた。現在使用可能な分子標的薬には、抗VEGF抗体としてアバスチン®(ベバシズマブ)、抗EGFR抗体としてベクティビクス®(パニツムマブ)、アービタックス®(セツキシマブ)があるが、それらの薬の特徴と使い方について本当にわかりやすく、楽しく教えていただいた。大腸癌の化学療法は、5FU→5FU/LV→IFL(イリノテカン)→FOLFOX・FOLFIRI→FOLFOX / XELOX・FOLFIRI+アバスチン® / ベクティビクス® / アービタックス®と変遷をとげてきたが、平均生存期間はBSC8か月に対して、これらの薬を使用することによって24か月に延長するという。アバスチン®は血管増生をブロックするので、広くコンスタントに効果を示すが、出血、穿孔、高血圧、糖尿病、塞栓症、蛋白尿などに注意が必要である。ベクティビクス®は細胞増殖に関わる因子であるので、あたれば劇的に効果を示す可能性があるが、KRASが野生型(変異がない)であることが必要であり、皮膚症状、間質性肺炎に注意が必要である。分子標的薬を併用した化学療法は、究極の緩和医療であるという言葉が印象的であった。
野田消化器科クリニック
野田昌男