JDDW2014参加報告
シンポジウム肝癌の予防・制御をめざすB型肝炎の治療戦略に参加した。B型肝炎における肝癌発生のリスクファクターとして、高齢であること、男性であること、肝線維化が進んでいること、AST/ALT値が高いこと、AFPが高値であること、HBV-DNAが高値であることなどがあげられた。一方でALT<30、HBV< 4 log copiesのいわゆるInactive carrierでは肝癌発生はほとんどなく、予後は良好であることが示された。またその一方で近年B型肝炎に対して核酸アナログ(NA)製剤の投与が広く行われるようになってきたが、NA製剤の投与で、血中のHBVは消失しても肝癌発生はみられることも事実である。シンポジウムでは、NA製剤導入後の肝癌発生率は、5年で約8-10%あること、NA製剤投与24Wで約70%の症例がHBV陰性となるが、肝癌発生にはHBV陰性化はあまり問題ではなく、むしろAFP>10ng/mlが関係すること、が示された。
シンポジウム胃がんリスク評価の現状と問題点に参加した。近年H.pylori(HP)感染の胃がん発生に対する関与が明らかとなり、自治体によっては胃X線による胃がん検診から、HP抗体検査とペプシノーゲン(PG)検査を併用するいわゆるABC分類による検診にシフトしようとする動きが少しずつみられている。ABC分類ではHP抗体>10U/mlをHP陽性、PGI<70ug/lかつPGI/II比<3.0をPG陽性として、それぞれHP陰性PG陰性をA群、HP陽性PG陰性をB群、HP陽性PG陽性をC群、HP陽性PG陰性をD群として、HP感染の自然経過と対比した分類が行われてきた。これにより本来ならばA群からは胃がんの発生は見られないはずなのであるが、A群にも少なからず胃がんの発生が見られることが大きな問題点であった。シンポジウムではHP抗体3.0-9.9 U/mlの症例の中にも約30-40%のHP陽性例が存在することが示された。ABC分類による検診を行うことでA群を観察例から除外するためには、HPのcut off値を3 U/ml未満に設定することが必要であり、PGI/II比も<4.0に設定する方がいいのかもしれない。 野田消化器科クリニック 野田昌男