シンポジウム 大腸憩室出血の診断と治療
 日常臨床で特に消化器領域では血便は頻繁に遭遇する兆候であるが、腹痛や下痢がなく下血する場合、大腸憩室出血である場合が多い。そして実は、大腸憩室出血は出血量も多く、その出血部位の同定が難しいことから治療に難渋することが多い疾患の一つである。日本人ではもともと右側の結腸憩室が多くみられてきたが、近年日本人でも左側の憩室、女性での症例が増加傾向にあり、肥満がそのリスクファクターになっているようである。大腸憩室出血の場合、出血後24時間以内に検査を行えば、出血部位の同定は約25%で可能であるが、24時間をすぎると、2%以下になってしまうという。そして出血部位を検出するためには経口大腸洗浄液の併用が有用であるとのことであった。
 憩室の中での出血部位は底部:頸部=3:1であり、頸部で露出血管が認められればピンポイントのクリッピングが有用であり、底部からの出血の場合には憩室に蓋をするような複数個のクリッピングが有用である。再発率の点からは、Ligation bandを使用するEBLや留置スネアを使用するEDSLといった手法の方が優れているが、どうしても筋層を巻き込んだ治療になるため、透析例やステロイド使用例では穿孔の危険があり注意が必要である。高齢で再発を繰り返しどうしても出血部位が同定できない症例では、バリウム注腸法も有用であるようだが、IVR治療や外科的治療のなった場合には治療の障害になってしまうので注意が必要であるとのことであった。最近昔に比べ、高齢者の大腸憩室出血がやや多くなった気がする。大腸憩室出血を防ぐという意味ではバリウム検診も良かったのかな、とつい思いながら聞いてしまった。

一般演題 胃-感染症
 ポスターセッション 胃-感染症の座長をさせていただいた。
・上部内視鏡スコープによる擦過創とピロリ感染症との関連について
・内視鏡にて経時的変化を追えたヘリコバクターピロリ菌成人感染の2例
・当院におけるVonoprazanを用いたHelicobacter pylori除菌療法の現状
・当院における胃アニサキス症の検討
の4演題である。H.pylori未感染胃では炎症がないため、物理的刺激により粘膜の脱落が起こりやすいのではないかとの仮説、通常H.pylori感染は幼小児期に起こりやすいとされているが夫婦間での成人感染を示唆する2症例が報告された。PPIで1次2次除菌失敗例でもVonoprazanで3次除菌が成功した8例や、サバやカツオの生食による胃アニサキス症が近年増加傾向にあることが示された。
                                                  野田消化器科クリニック 野田昌男