JDDW2018参加報告

地域医療の再生と活性化に向けた兵庫県立病院からの取り組み
 兵庫県病院事業管理者の長嶋達也先生の講演を拝聴した。お話の内容からてっきり行政出身の方と思っていたところ、もともと脳神経外科医で臨床をされていた方と聞き親近感を持って聞かせていただいた。わが国では明治維新の時3330万人だった人口が2000年に12693万人になるまで増え続けたが、その後は減少の一途となり2060年は8808万人くらいになるらしい。また総人口に占める65歳以上人口のしめる高齢化率は2025年には30%を超え2045年には35-38%とピークを迎えるという。このように人口減少と少子高齢化の突き進むなか、兵庫県では阪神淡路大震災による負担2兆3000億円をかかえるという厳しい財政状況のもと、公立病院改革ガイドラインに沿った統合再編が積極的に進められている。
 2015年県立尼崎病院と県立塚口病院が県立尼崎総合医療センターに統合されたのを皮切りに、2019年には県立柏原病院と柏原赤十字病院が統合され県立丹波医療センターになり、2022年には県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院が統合され播磨姫路総合医療センターなることが決定しその開院準備が進められている。このように兵庫県では県立病院の枠組みを超えて、赤十字病院や社会医療法人などとの様々な統合再編をもって、次の世代に伝える県立病院を確固としたものにしていく取り組みがなされているという。

除菌後時代を迎えた胃癌診療とA型胃炎における諸問題
 2013年2月ピロリ菌感染胃炎に対する除菌療法が保険収載されて以来、胃がんの発生は減少してきているが、その一方で除菌後の胃がんは発見が困難になっているのも事実である。除菌後に発見される胃がんの特徴として、周辺より明るく円形に近いこと、インジゴカルミンによる色素観察が困難になること、皺襞の腫大と関連すること、腺窩上皮の過形成をきたし境界が不明瞭になること、陥凹型や粘膜下層がんで見つかることが多いことなどが示された。
 また1973年StricklandとMackayらによって提唱されたA型胃炎(自己免疫性胃炎)ついて、約1%弱の症例で認められ、男女比1:3で女性に多いこと、何らかの自己免疫疾患を約45%に合併することが示された。日本ではピロリ菌感染の合併が多く複雑になっているが、診断については、内視鏡でみられる逆萎縮、高ガストリン血症、胃体部生検でECMを認めるもしくは抗壁細胞抗体(PCA)陽性などを指標として総合的に判断するべきである。HP抗体陰性、UBT陽性例では他の尿素を産生するKlebsiella属が存在すること、PCA値は低い症例でむしろ胃がんの発生が多いことなど興味ある知見も発表されていた。